高齢者の生活全体を支えるネットワークは、平成13年度に高齢者を取り巻く社会環境の現状と問題点を、幅広い職種の間で共通の認識として持つことを目的とした研究会「老年医学懇話会」を発足させました。参加者は名古屋大学大学院医学系研究科老年科学教室をはじめ、名古屋弁護士会(現愛知県弁護士会)、福祉・行政関係者、社会学者、記者ら幅広い専門家です。今でこそ、高齢者を取り巻く社会環境を考える際、多様な専門領域からの視点が必要だと認識されていますが、当時は極めて先進的な組織であり、前例がないため試行錯誤しながら活動を進めていました。
その後、平成15年12月に「高齢者の生活を専門分野の枠を超えて支える総合・学際的ネットワークを結ぼう~すこやかなエイジングライフ 医学・福祉・生活・生きがい・街づくり等、トータルで考えよう~」と題したシンポジウムを開催したことを機に、各方面からの専門家から高齢者の生活に関する意見を集約した資料集を作成しました。これはその後に社会的な興味が高まった高齢者を支えるネットワークづくりの模範事例として、多くの方々に活用していただくことができました。
私自身も、医療分野のみならず、様々な分野の学問・実践・研究の成果を統合することにより高齢期を豊かに暮らすための具体的な学問といえる「老年学」を皮切りに、そこで得た知見を医師や医療・介護関係者に広めるべく、医療・地域のケアのあり方を考え医師や医療・介護関係者に対しての指導や実践を促していく「総合医学教育学」の活動を行ってきました。さらに現在は、より広い視野にたって高齢者を取り巻く環境を考えるために「公衆衛生学」も専門領域とし、医師や医療・介護関係者との関係を密にしながら、多職種連携活動を推進していきたいと考えています。
高齢者の生活全体を支えるネットワーク代表
名古屋大学大学院医学系研究科 国際保健医療学・公衆衛生学教室 准教授
平川仁尚
代表プロフィール
1971年7月18日生まれ。横浜市にある私立桐蔭学園高校出身。1998年に名古屋大学を卒業後、土岐市立病院で内科研修を行う。2001年 に名古屋大学の老年内科に入局し、大学院に入学する。2005年に大学院を修了する。2008年に名古屋大学医学部附属病院卒後臨床研修・キャリア形成支援センター副センター長(特任助教)。2014年12月より、名古屋大学大学院医学系研究科 国際保健医療学・公衆衛生学教室 講師、2018年2月より同 准教授(現職)となる。
名古屋大学医学部附属病院老年内科などで高齢者医療に従事する傍ら、2001年に発表された「高齢者の終末期の医療およびケア」に関する日本老年医学会の「立場表明」を受けて、高齢者の終末期ケアを中心に高齢者ケア全般の研究を開始。2008年より高齢者ケアと医学教育を融合させた領域横断的研究を実施。また、研究成果を生かして、医師教育に留まらず、看護・介護職員を対象としたワークショップの開催などを通じて高齢者ケア教育活動を全国的に展開している。